校長室だより
広島県立加計高等学校 芸北分校を訪問
2016年3月16日(水) | 校長室だより
平成28年2月29日(月) 広島県立加計(かけ)高等学校 芸北(げいほく)分校を訪問しました。
芸北分校を訪問したのは、広島県の過疎地に、地域と一体となり、1人ひとりの子どもたちの力を着実に伸ばしている、素晴らしい高校があると聞き、訪問し、頑張っている生徒たちや先生方 の姿を実際に見たかったためです。
この高校は、島根県との県境近くの山間地にあり、周辺にはスキー場があります。広島駅からバスを利用すると2時間半かかります。
また、北広島町立芸北中学校との連携型中高一貫教育校(能勢高校と同じ)でもあります。
芸北分校の細川洋校長に訪問の依頼をしたところ、芸北分校の真の教育を知ってもらうには、2月29日(月)に隣接する文化センターで開催する「3年生を送る会」を見に来るのが一番良いということで、訪問の日が決まりました。
この高校は、普通科でありながら、2年生で「文理」「農業」「体育」の類型に分かれます。1学年1クラス(40名定員)で、全校生徒が74名しかいませんが、全員が運動クラブもしくは農業クラブに入部し、第2クラブとして、地域の伝統芸能である神楽部への入部を勧めています。
クラブ活動では、スキー部が毎年インターハイに出場、数年前には野球部が県大会ベスト16、その他バレー部、卓球部、テニスなどクラブ数を絞り、少ない人数ながら素晴らしい成績を収めています。進学実績においては、ほぼ毎年、国公立大学大学に5名以上の合格者を輩出しており(大学進学者の4割以上が国公立大学は、県内でもトップクラス)、就職においても公務員試験の合格など著しい成果をあげています。、
県の教育委員会も芸北分校の教育力を高く評価しており、今後地元の子どもの数が大きく減少していくことから、全国から生徒を募集することを認めました。そして地元の北広島町は、閉校した小学校の校舎を3500万円かけて改築し寮を提供しました。当然、寮費の補助もあります。
さて、実際に「3年生を送る会」に参加させていただいて驚いたのは、生徒たち全員が、明るく大きな声であいさつができること、生徒たちが自主的に会を運営していること、チームワークや堂々としている態度、人前で自分の考えをはっきりと言えること等々、まさにこれからの社会を生き抜いていく力の数々。また、歌やパフォーマンスなど、各学年からの出し物のレベルがとても高いこと。そして、何よりも生徒数が少ないことによるハンディや悲観などはまったく感じられませんでした。教員と生徒との信頼関係、お互いが刺激し合って、お互いのモチベーションを高めているようにも感じました。
卒業生24名からは、本当に芸北分校に入学して良かったという率直な思いを自分の言葉で述べる場面もあり、3時間ほどの間、驚きと感動の連続でした。このような高校が過疎地にあったのです。
「3年生を送る会」の最後の出し物は、神楽の披露でした。約30分の内容でしたが、太鼓や笛の音色に加え、スケールの大きさと舞いの迫力は高校のクラブのレベルからはるかにかけ離れたものでした。
この会の最後には、細川校長の計らいで、私から訪問のお礼の言葉を述べる機会も作っていただきました。
地元の中学生たちは、芸北分校に入学すれば、広島市内などの高校に通うより、クラブ活動を十分できること、進学・就職が保障されていることをよく理解しています。また、中高連携の行事を通じ、芸北分校で頑張っている高校生たちの姿をかっこよく思うことから、意欲の高い生徒の入学にもつながっています。
芸北分校の訪問を通じ、高校を選ぶ際、スケールメリットや利便性をうたわれることがよくありますが、教員と地域住民とが、ともに子どもたちを育て上げていく思いと、小規模校のメリットを逆に活かすなどの工夫次第で、子どもたちのニーズに応える、素晴らしい教育を提供できることを実感しました。これからの能勢高校の教育、能勢町小中高一貫教育もやり方次第です。